「S井さぁーん!リラ居ないよ~。」

「あの子は、お母さんに会いに行ってるんだよ」

S井さんが引越す前、私にまだなつかないリラ。リラが居ないと言って探していると、S井さんは、リラはお母さんに会いに行ってると言ってた。

ちょっと離れてるところにお母さんがいるとか。

最初の捕獲と保護が終わって数日後。中長毛の茶色のキジ柄の猫が来た。リラにグルーミングをしたり、頭をこすりつけ合ったり。顔もリラに似てた。無き声を聞いた時に、リラのお母さんだと確信した。

私がここに越してきて、2年ちょっと。ここではじめて見る猫だった。

ここのメンツが変わったから、戻って来たのかもしれない。リラはここで産まれて、S井さんのおじいさんが避妊手術をした。リラはまだ小さくて、おばあさんが簡単に捕まえられたって言ってた。リラを産んでから、ヴェガはおじいさんが避妊手術をしたのだと思う。

私は、リラの年齢も、ヴェガの年齢も知らない。

おばあさんは、リラを2歳ちょっとって言ってた気がする。私が引越して来た時にいたと思う。だから3歳位かもね。だけど、とにかく、お母さんのヴェガは見た事が無かった。だから、リラとヴェガは少なくとも2年半は離れてるのだと思う。

それでも、リラとヴェガは親子だって覚えてるみたい。

母子の猫は、どのくらいの記憶があるのだろう。

きっと忘れる猫もいるのかもしれない。だけど、覚えてる猫もいるんだと思う。わからない。

だからさ、麻生が子供たちを一生懸命守ろうとして、体がきつそうだけどお乳をあげているのをみてると、この子たちも、母子だと覚えているのだろうかって考える。

わからない。

猫はしゃべらないからね。

今日も、麻生の所に行ったら、麻生がお乳を飲ませてた。

私は、リラとヴェガが一緒に居るのを見ると、うれしい。とてもうれしいんだ。