「しょうこちゃん!」
近所のMさんだった。
「あ、はい。どうしました?」
「あんた、猫ちゃんたちが、ご飯待ってるよ」
Mさんは子供の頃からここに住み、猫の問題を何年も、もしかしたら、何十年かも、みて来た人。昔は、猫を殺処分する事が当たり前で、ここの猫も何頭か町内の人たちで捕獲して、保健所に連れて行っていたらしい。
多分、誰も、そんな役割をしたくないのだと思う。だけど、誰かがしないと、増えすぎた猫にとても困っていたのだと思う。
餌をやるから、増える・・・。
それは一理あるかもしれないが、餌をやらなくなっても、一部の猫、特にメス猫はそこに残り、ここで子供を産む。私の家の周りのねこたちを観察していると、虫や鳥をとって食べている。ゴミも漁っていた。それと、誰かわからない人が、餌をあげたり、置いていたりする。昨日も、そんな餌を見た。
Mさんは、猫を嫌ってる。だけど、YouTubeを見てくれてた。私が撮る動画と、音楽が素敵だとよく言ってくれてた。
「しょうこちゃん、メヤニーかね、あの子はかわいいね」
「Mさん、猫嫌いでしょ」
「あの子はなんか違うんよ。私の足に擦り寄ってきてね。顔の層もいい。」
「あの子はなんだろうね、みんなに好かれるんだよ」
「猫は嫌いよ。でも、少し寄付したいと思ってる」
「え?」
猫の問題でS井さんのご主人と色々揉めた事があるらしく、猫のことには絶対に関わりたくないと言ってたいMさんの言葉に驚いた。そして、とても、とても嬉しかった。
この町で、猫たちと共存するには。そろそろ、メヤニーの去勢をしなくてはいけない。その費用をどうするのか、日々頭をかかえて、考えていた。Mさんが援助くださったら、メヤニーの去勢手術をしようと思う。
「ぼくたちの町」の問題。「ぼくたちの町」の猫たち。「ぼくたちの町」の人の気持ちとお金で。
何度も、何度も、心の中で、「ありがとう」と言った。
この町の今までのことを知ると、それは「あたりまえ」じゃないから。「ありがとう」と湧いてきたのだと思う。
メヤニーの手術の事をゆかさんに伝えに行こうとすると、メヤニーたちがついてきた。ゆかさんの家を出ると、またみんなついてきた。