明日は早朝から捕獲作業。お手伝いをしてくれる人は出てこなくて、Yさんと二人の作業。不安になって来た・・・。やれる事はやっておこう。

夕方、捕獲器を一台持って、おじいさんの猫たちの所へ行ってみた。

見た事のない男の人が居た。

「こんにちは・・・。餌あげてるんですか?」

「ここ、小さいのもいるでしょ。かわいそうで」

「でも、餌、あげないでください。どこの方ですか?この町内?」

「いや、3丁目」

「3丁目だったら、隣県の私の友人の友人が去年TNRをしたそうです。だからそこにも猫いっぱいいると思います。」

「ちょっと上の方に行くといるね・・・。おねえさん、ボランティアの人?」

「いいえ。違います。ボランティアじゃありません。好きでやってるわけじゃありません。この近くに住んでいます。ここは、長い年月猫の事がすごく問題になっていています。誰が餌をやったとか把握できなくなるんです。明日、ここの猫を3頭だけだけど、病院に連れて行って避妊去勢をします。だから、餌はあげないでください。3丁目にも猫がいると思います。3丁目の猫を見てあげてください。」

「わるかった・・・。もうしないよ」

「すいません。お願いします」

「アジあげるよ。」

「?アジ?要らない」

「電子レンジでチンしただけだから。」

「塩も何もしてない?じゃあもらう。」

猫の為に持ってきたアジだったから、要らないと言っても、多分無駄になるし、悲しいかもしれないから。もらう事にした。

ビニール袋にアジが半身入っていた。

かわいそうとか、かわいいとか。わからないでもない。でも、他のエリアの問題より、自分のエリアの問題をみつめて欲しい。TNRはエリアの内側の人が動かないととても難しい。

可哀そうとか、可愛いとか・・・。それも優しさかもしれないけど、この子たちは、このエリアの人が向かい合って、育てて、見送っていく。それが道理じゃないかと思うんだ。それが、ここに猫を住まわせてしまった、ここで産ませてしまった、このエリアの自然の一部というか。このエリアの生物というか。

私はこのエリアの住人ではあるけど、このセクションというか、おじいさんの猫たちの行動範囲の住人ではない。

よその子が、可愛いから、可哀そうだからとその日一晩、数日、ご飯をあたえても、それは一時しのぎでしかない。その後、また猫が増えた、誰が餌をやった、糞尿が、猫被害が・・・誰が悪いという話になったり、猫をより嫌悪したりする。嫌悪されている猫と愛されてる猫は顔つきが違う。

終わりがない。終わらせたい。聞きたくないんだ。だから、物事を複雑にしないで欲しい。それより、3丁目の猫たちの事を見守って欲しい。そこには、責任とか、地域の理解とか、協力とか、いろいろ付随する。隣り町は、通りかかるだけ。そこで、餌をあげると、猫は可愛い。

とりあえず、はたモンを捕獲した。

今夜はYさんの庭で一晩過ごしてもらう。少し涼しくなってきたので大丈夫と思う。

Yさんからメッセージがあり、はたモンはとてもおとなしくしているらしい。

はたモンをYさんの家に運ぶ途中、S井さんの家の前のゴミステーションに近所のMさんが居た。

「あっ、Mさん、こんばんは」

「あ!しょうこちゃん。Yさんも。娘さんね。お名前は?」

Mさんも、猫を嫌悪していたひとり。

「なんか、最近・・・S井さんのご主人への嫌悪が薄れてきて・・・。なんでだろうね。あのメイちゃん、かわいいわね。なんか、顔が変わって来たね。」

屈託のない優しい笑顔で言った。

「ここの辺り、猫が居なくなったね。それはそれでなんか寂しい気もするわねぇ」

Mさんが言った

ネーラが出てきた。Yさんの担当猫。子供たちが、ネーラに寄っていき、なでる。それをMさんが、笑顔で見てる。

優しい空気が流れる。

猫と、人が、共生する町。

きっとね。


麻生子、むしゃむしゃ食べだした。日増しに元気になって行ってる。面倒だ。仕方ない。とか言いながらでも、通って薬飲ませて良かった。