野良猫のお世話をしているという噂があるおばあさんの家を訪ねてみた。

おばあさんに富士男さんの写真を見せると「うちの猫です」といった。よかった、と思って、富士男さんを連れて行くと「あれ、これは違います」と言った。とりあえず、私の家に連れて帰ってケージに入れた。

富士男さんはうんこ臭かった。手足はうんこまみれだったから洗ってみた。手足を洗うために洗面器にお水を入れてくると、富士男さんはお水をたくさん飲んだ。

手足を洗ってもうんこの臭いは取れなかった。

毛がたくさん抜けるので、ブラシをかけた。

 

富士男さんはあまり食べなかった。

とても、とても、おとなしかった。

骨がごつごつしていた。

だけど、以前より、穏やかな顔になって、かわいい顔になってた。

富士男さんはがっつりして、大きかったけど、痩せると小さいし、多分メスだと思った。だけど、富士男さんと呼ぶ事にした。

初めて見た頃の富士男さん

その晩、ゆかさんが家族で富士男さんの様子を見に来た。

富士男さんが食べないというと、ウエットフードやねこのミルクを分けてくれた。

 

翌日、富士男さんは、うんこをした。脚にはうんこがついていたので、濡れたタオルで拭いた。その後、何度か吐いた。

心配になって、ねこはちの、こはちに連絡をした。ケージに居る事もストレスになってるかもしれないからと、リリースをする事にした。もし、病院に連れて行って、餌をあげている人が居れば、心配しているかもしれないと。

あとは、猫たちが自分の人生を決めて生きるのだと思う。ペットじゃなく、それぞれ、人間と猫の都合と選択で生きてる、この町で共生する。

 

富士男さんは生きていた。

私はもう、罪悪感を持たなくていい。

見捨てたわけじゃなかった。どうにもできなかっただけ。

生きて、姿を見せてくれて、一日、一緒に過ごさせてくれて、ありがとう。